2021年6月10日、いよいよアルバムをリリースいたします♪
7弦ギター尾花毅さんと昨年の春頃から企画、夏の終わりから
レコーディングを開始し、ああでもないこうでもないと、半年以上・・
今年の春にすべてのレコーディングが終了、めでたく完成いたしました!
7弦ギターと唄だけのシンプルなDuoで、MPBを中心に
サンバ・カンサォン、ショーロの曲なども含め、全13曲。
(ブラジルの曲が12曲と、アメリカの曲が1曲)
ジャケットは、NY在住のイラストレーターSmantha Hahnさん。タイトルが"Cores dos Sonhos"(ポルトガル語で『夢の色』)なので、水彩が滲んでいくイメージを探していたところ、たまたまインターネットでサマンサさんのとても素敵な水彩イメージの作品を発見。どんな方かも知らずお願いしてみたところ快諾してくださり、こちらのイメージを伝えると、魔法のような水彩インクで描いてくださいました。彼女のinstagramの動画を拝見すると、どんどん色が混ざっていく感じで、ご自身も最終的にはどんな色合いになっていくか、ハッキリとはわからないようです。なので、言ってみれば、偶然の色彩。それも素敵で、今回のイメージにも合うものでした。タイトルについてはCDのライナーノーツにも書いていますが、スペインの画家ジョアン・ミロの絵画詩"Ceci est la couleur de mes rêves"(This is the color of my dreams)に着想を得て、決めました。無意識の顕れでもある「夢」。その色は、捉えどころがなくて、神秘的なイメージです。私にとっての選曲も、直感で浮かぶことが多々あり、ブラジル音楽の多彩な色合いと相まって、それらが滲んでいく感覚を表しています。
また前置きが長くなりましたが(笑)、CDに添付のライナーノーツとはまた別の視点から、収録曲にまつわるお話しを・・。
まず#1、"A Chuva Caiu"ア・シュヴァ・カイウ/Antônio Carlos Jobim&Luiz Bonfá 『雨降りぬ』。
これは割と長い間演奏している曲です。「雨が降って、大地を湿らせ、私の頬を洗い、私の心にも降った」と、
せつない想いを唄っているのに、何だか不思議な安堵感とあたたかさも感じる、サウダーヂな曲。
こういう曲に、またガットギターの音色が、せつなくあたたかく響きますね。
#2は、"Marambaia(Só Vendo que Beleza)"/Henricão&Rubens Campos 『マランバイア』。
この曲は、初めて聴いた時から「あ、尾花さんだ」と思った曲で、実際尾花さんとしか演奏していません。
マランバイアは、リオ・デ・ジャネイロの西の郊外にある海辺のエリアで、今は海軍の土地だそうですが
この曲が作られた当時は、海も山も鳥も教会の鐘の音も、すべてが美しく幸せに満ちているような、
そんな素敵な場所だったのでしょうか。尾花ギターの躍動感が、さらに多幸感を増してくれます。
#3 "The Nearness of You" /Hoagy Carmichael&Ned Washington 『あなたのそばに』。
このアルバムの中で1曲だけの英語曲、Jazzスタンダード。最近はLiveでもよく演奏する曲です。
Jazzを唄っていた時は自分で唄いたいとは思っていなかった曲ですが、何故かこのDuoで演奏
したくなり、今では定番となりつつあります。歌詞のように、何も特別なことはしなくても、
曲そのものが持つ優しさ、あたたかさのおかげで幸せな気分になれるという、不思議な曲。
#4 "Joana Francesa"/Chico Buarque 『ジョアナ・フランセーザ』。
シコ・ブアルキ特集のカルテットで演奏してきた曲ですが、時々Duoでも演奏するシコ・ブアルキのワルツ。
映画のために書かれた、仏語とポル語が入り混じる曲。イントロとソロ後のギターが、尾花節、聴きどころです。
#5 "Mente ao Meu Coração" メンチ・アオ・メウ・コラサォン/Francisco Malfitano&Pandia Pires 『私の心に嘘をついて』。
せつなくもあたたかい、古いサンバの曲。こちらも、私の中では"尾花印"の曲です。
「疲れてしまった私の心に、子供のお話を聞かせてあげて、バラ色の嘘をついて」。
こういう「せつないけれどあたたかい」感覚も、サウダーヂというのでしょうか。
#6 "Tico-Tico" (French Version)/Zequinha de Abreu&Jaques Larue 『チコ・チコ』
こちらはここ1-2年ぐらいでこのDuoで演奏するようになった、お気に入りの曲。
ショーロのスタンダード中のスタンダードということで、尾花さんは散々演奏していると
思いますが、私はフランス語バージョンで挑戦しています。このDuoの初期でよく演奏
していた"Odeon"に続く仏語ショーロ。とにかく楽しいので、一番早くOKが出た曲です。
#7 "Rosa"ホーザ/Pixinguinha&Otávio de Souza 『薔薇』
こちらはこのDuoでも長く演奏、定番化している、美しいショーロの曲。
もともと器楽曲なので縦横無尽なメロディを唄うのは難しく、いまだに修行中ですが
現時点でのテイクを。尾花さんも普段のショーロとは違い、転調を挟んだ凝ったアレンジで。
Marisa MonteやCaetano VelosoなどMPBのスターに加えて、最近では米国のJazzシンガー、
Gretchen Parlatoもカバーしていますね。長きに渡り演奏され、唄い継がれるまさに名曲。
#8 "A Noiva da Cidade" ア・ノイヴァ・ダ・シダーヂ/Francis Hime& Chico Buarque『街の花嫁』
この曲も、シコ・ブアルキ特集のカルテットで演奏していた、子守唄のような微笑ましい曲。
7弦ギターと唄のDuoヴァージョンは、もう少し身近で親しみのある感じ、になっているでしょうか。
イントロと最後のギターメロディはそれぞれブラジルの子守唄からの引用で、原曲にも使われています。
#9 "Embarcação" エンバーカサォン/Francis Hime&Chico Buarque 『船へ』
初めて聴いた時に「このDuoでやるしかない!」と思い、割と最近のレパートリーにもかかわらず、
すぐにしっくりきてしまった曲。とにかく転調の連続で、尾花さんならではのドラマチックな展開と、
私の元々持っていた(若かりし頃の・・)元気な感じも引き出されている?、なかなか珍しい曲です。
#10 "Fora de Hora"フォーラ・ヂ・オーラ/Dori Caymmi&Chico Buarque
日本語では「時ならず」、とも訳されますが、ニュアンスとしては「不意に」という感じでしょうか。
うまく一言で訳しづらいタイトルです。ドリ・カイミとシコ・ブアルキという、私のアイドル2人のコラボ。
ドリの美しくもどこか親しみのあるメロディと、せつなくあたたかい(これ好きなんです)シコの歌詞が素敵です。
"A dor de ser mulher"(女であることの痛み)というフレーズ・・おじ様2人が作った曲なのに、とても共感できる、
初めて聴いた時から自然に唄いたい、と思った曲。ブラジル音楽の枠にはまらない、普遍的な曲だと思います。
#11"Noturna"ノトゥルナ/Guinga&Paulo César Pinheiro 『夜想曲(ノクターン)』
素晴らしいギタリストでありコンポーザーでもあるギンガ、ここ数年は来日されたこともあり、
沢山演奏させて頂いています。尾花さんはもっと前からギンガ・マニアですから、このDuoとは別で
ギンガの曲を長い間演奏しています。不思議な、でもどこか中毒性のあるメロディとハーモニー。
この曲はパウロ・セーザル・ピニェイロの神秘的な歌詞と相俟って、ポピュラーソングと思えないような
格別な何かを感じます。曲の持つ力が大きすぎてまだまだ表現しきれていませんが、現時点の記録を。
#12 "Mello Baloeiro"/Guinga&Anna Paes 『メロ・バロエイロ』
こちらも初めて聴いた時から、大好きな曲の一つ。ギンガのパートナー、アンナ・パエスが最初に
ギターの教え子である少年のためにモチーフを書き、それを気に入ったギンガが続きを書いて
イメージが広がっていったそうです。そういうナチュラルな成り立ちも素敵な上に、断片的に描かれた
歌詞もどこか懐かしく、幻想と現実の間をふわふわしながら情景を想像できる、子守唄のような素敵な曲。
いつも何か大きなものに包まれるようで、曲そのものが持つ力に助けられながら演奏しています。
#13 "Alguma Voz"アウグマ・ヴォス /Dori Caymmi&Paulo César Pinheiro 『或る声』
このDuoの初期から演奏している、私も尾花さんも大好きなドリ・カイミさんの曲。
大詩人・パウロ・セーザル・ピニェイロさんの、自然を敬愛する歌詞の壮大さも相俟って、
ブラジル音楽の奥深さを感じる曲です。尾花さんのギターの持つ「おおらかさ」が
存分に活かされているのではないかな?と思います。『或る声』とは、"Deus"、神の声。
音楽も、自然も、人間の力だけでない「なにものか」を感じる瞬間がありますね。
この曲の壮大さに少しでも近づけるような表現を、さらに追求していきたいものです。
・・と、やっぱり長くなりました(笑)。曲のことを語り出すと、際限がないですね。
そんなこんなでとても愛情を持って可愛がっている曲たち、です。私の解釈だけでなく、
皆さんがそれぞれ想像を膨らませて、ご自身の愛着をもって聴いて頂けたらもっと嬉しいです。
いつもの縦横無尽かつテクニカルなギターだけではない、
優しく穏やかでおおらかな尾花氏のギターも、じっくりお愉しみ頂けたらと・・。
Duoとしては、まだこれからさらに成長していける気がしますので、
何処へ進むかわからないけれど、さらに進んでいきたいと思います。
どうぞじっくりゆっくり、可愛がっていただける作品になりますように。
Kayo Kamishima
*CDに添付のセルフライナーノーツには、もう少し客観的な曲説明を記載しています。その際の曲解釈にあたり、
ポルトガル語翻訳の荒井めぐみさん(Arco Azul)にご助言をいただきました。また、今回のアルバムに収録された曲の
発音指導として、サンパウロご出身のヤマガタケイコさん(Arco Verde)にもご協力いただきました。ありがとうございます!
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*Kayo Kamishima & 尾花毅 Duoアルバム"Cores dos Sonhos"(コーリス・ドス・ソーニョス)『夢の色』
2021年6月10日、オンラインストアにて発売開始。只今ご予約受付中です♪
[ SolLua Records (ソウルーア・レコード) STORE ] https://sollua-records.stores.jp/
(6/13(日)渋谷ノースマリンドライブ、6/27(日)赤坂Velera等、Live会場でもお買い求めいただけます)
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