ブラジル先住民の椅子 @東京都庭園美術館

先週になりますが、運転免許の更新が思いのほか早く終わったので、

気になっていた『ブラジル先住民の椅子』展へ行ってきました。

 

大学で文化人類学に触れていたこともあり、もともと"先住民"=native/indigenous peoples(特に南北アメリカ大陸の)に興味があるのですが、ブラジルの先住民となるとアマゾン流域の皆さんの写真やイメージしか浮かばず、どんな歴史を持っていて、どんな文化や生活様式、思想なのか、ということに漠然とした興味がありました。そこで、この展示。『椅子』という造形物にフォーカスしているところが、この美術館らしいですね。

 

展示の中で観ることができる資料や映像にもありますが、彼らはこの『椅子』を、大切に切り採った大きな一本の木の丸太から、それぞれの職人/アーティストが思い思いの動物の形にざっくりと作り上げ、その状態で森から担いで来て、細部の製作をしているようです。この『椅子』を作ることは、彼らの生活を支える手段であり、工芸品ではなくもはやアートなのだと。ポルトガル語を習得した先住民の方が熱く語っていました。
 
今回展示されている『椅子』は、伝統的に彼らのしきたりや儀式に使われてきたような宗教的/儀礼的意味のあるものと、動物彫刻としてのアート的なものと、大きく分けて二種類あるようです。コンドルやハチドリなどの鳥から猿、ジャガー、アリクイ、カエル、コウモリ、エイまで、とにかく多様で愛嬌があって。

行く前までは、古い昔に作られたものが並んでいる、ことを想像していたのですが、目の前に現れた『椅子』たちは、何とモダンでシンプルで、美しいのだろうと、ビックリしました。要するに、"現在進行形"なのです。いちばん古くて150年程前のもの、ほかの多くはつい最近作られたもの、なのだそう。そして、彼らのこの作品はようやく世界的に日の目を見るようになってきて、今回の展示も国外で初めて公開されるコレクションなのだとか。何だか可愛らしくて、おかしみがあって、木の色艶が美しくて、バランスも絶妙。魂の何処かが癒されるというか共鳴する感じがありました。描かれている文様は、アイヌやエスキモーに近いものを感じたり、メキシコや中米の香りを感じたり。「ああ、繋がっているんだなぁ」と。写真いちばん右下の地図はブラジルの北部を表していて、特にシングー(Xingu)川流域の居住区に住む皆さんの作品が多めでした。マトグロッソ州シングー国立公園。もうちょっと若かったら、フィールドワークにでも行ってみたくなる場所。アマゾンだけでなく、そんな場所がポツポツとあるのですね。ブラジル、広すぎる!

ハッキリ言ってしまえば、普段触れている『ブラジル音楽』とはまたちょっと別の世界(展示で使われていた音楽も、このために作られたという琵琶の曲でした。とても空間や作品に合っていたけれど)のお話。でも、(ブラジルだけでない)彼の地のnativeの方々は、きっと遠い祖先で繋がっているはず。と思うほど、何だかシンパシーを感じてしまうのです。機会があれば、もっと色々知りたいですね。パリのケ・ブランリ美術館なんかでもきっと、興味深く迎えられそう。彼らのプライド、アイデンティティであるこれらの作品が、世界中にもっと知られて価値を見出されますように。久しぶりにゆったりと素晴らしい作品に触れられて、魂が喜ぶ時間でした♪