さて、7月です!どのLiveもスペシャルですが、こちらのLiveは今年どうしても実現したかった、とてもスペシャルなLiveです。大好きなJazzピアニスト・伊藤志宏さんとのduoで、ブラジル音楽の偉大な作曲家、アントニオ・カルロス・ジョビンの曲だけを集めたLiveを、7/16(日)の夜、こちらも大好きなお店、吉祥寺Stringsにて行います。
アントニオ・カルロス・ジョビンといえば、"Bossa Novaの父"と言われ、Bossa Novaという音楽を創った一人として有名です。私自身はブラジル音楽を唄い始めた10年以上前には"イパネマの娘"や"Wave"などBossa Novaのスタンダードを唄っていましたが、次第に「私は"Bossa
Nova"ではないんじゃない?」という思いが生じてきていました。クールにサラッと、力を抜いて唄う、都会的でお洒落な音楽。それが私のBossa Novaの印象でした。自分の生い立ちや、これまで歩んだ道を想えば、それは全く逆のもの(笑)。だから、私にはトム・ジョビン(彼の愛称です)の音楽は似合わないのでは?と。
それでも何故か、少しずつ、Bossa
Novaのイメージとはまたちょっと違った彼の楽曲を見つけるようになります。とても人間的だったり、深い感情を唄っていたり、艶っぽい輝きのある曲たち。そして、時折参加してきたブラジル音楽セッションで選ぶ曲も、何故か彼の曲が多くなり、自分のLiveでも、主流ではないにしろ毎回何かしらジョビンの音楽を唄うようになっていました。知れば知るほど、彼の音楽の魅力はBossa
Novaだけではないのだな、というのがわかってきたのです。ご存知の方も多いと思いますが、彼の音楽にはクラシック的な要素を持った楽曲が沢山あります。そして、よく知られるBossa
Novaのスタンダードのほかにも、カテゴライズし難いような、「うたもの」の曲が沢山存在します。私が愛しているのは、そこです。絶妙なメロディ、ハーモニー、そしてリズム。そこにヴィニシウス・ヂ・モラエスやシコ・ブアルキなどの奥深い歌詞が乗り、唯一無二の美しい曲になっています。
正直、今でも私は余程のことがない限り、"Wave"や”イパネマの娘"、"Chega de
Saudade"などを自分で選曲することはありません。有名だからではなく、(私にとっては)歌詞に共感する部分がなく、自分が唄う必然性を感じないからです。勿論、メロディが好きだったり、人の素晴らしい演奏を聴くことは好きだったりします。有名な曲でも、歌詞に共感できるものは、唄っています。...なんて、ちょっと生意気かもしれませんが。でも、そこだけは嘘はつけない不器用者でして。。
そんな訳で、そういった”Canção"、「うた」としてのジョビンを、彼のメイン楽器であるピアノと唄で表現したいなぁと常々思っていたのですが(ジョビン本人の弾き語りが実はいちばん好きです)、ここ数年ずっと気になっていたピアニスト、伊藤志宏さんに弾いていただくイメージが離れずに困っていました。志宏さんといえばJazzピアニスト。でも彼はJazzにとどまらずに、基本的にノンジャンルな表現力をお持ちのピアニストだと私は思っています。...にしても、彼のようなアート性の高い、売れっ子ピアニストが私のオファーを快諾してくれるとは思えない。第一、コワそう...。笑 でも実際お話ししてみると、とても正直であることに変わりはないのですが、私自身も正直になれるような、そんな不思議な人でした。
志宏さんについてはまた別の記事でご紹介するつもりですが、あの「綺麗なだけではない、でも時折とてつもなく美しい」ピアノに惹かれ、不定期に彼のLiveを聴きに行くようになって数年経ちます。それと同時に、私はもうずっと長い間「ピアノをもう一度習いたい」という気持ちがあり(弾き語りのほか、正しい譜面を書くためにも)、唄のレッスンその他を落ち着けて、ようやく今年ピアノレッスンを始めました。どうせなら、好きなピアニストに習いたい、ということで、ズバリ志宏さんにお願いしたのです。彼は「本当にやりたいなら、いいよ」と(笑)。
で、彼のレッスンに通うようになってもうすぐ半年でしょうか。毎日弾きなさいと言われ、ほぼ毎日ピアノを弾いています。昔は練習が大嫌いだったのに。でもおかげで今、音楽と向き合う上で、とても大きな意識改革になっています。基本的にレッスンを受けることと、Liveで共演していただくことは別のことですが、「好きなピアニスト」という意味では一致します。そしてやはり今回のLiveで理想とする音世界を想うと、志宏さんのイメージがどうしても離れなかったので、無謀ながらもお願いしてしまったという訳です。
「ジョビンは絶対に唄があった方がいいから、普段は(インストでは)なかなかやらない」という志宏さん。きっと原曲とは全く違うご本人色のアレンジになるのでは?と予想していましたが、なかなかどうして、瞬時に「うた」のエッセンスを掴んでくださり、時に美しく陰影豊かに、時に眩しいほどキラッと煌いたり、本当に「綺麗なだけではない、でもとてつもなく美しい」ピアノです。
彼は世代で言えば同じぐらいだけれど、音楽家としては本来届かないほどのレベルにある人(と私は思っています)。そしてスケジュールも超絶お忙しい方なので、次はいつになるかわからない、本当にスペシャルなLiveです。という訳で、是非ぜひゼヒ、駆けつけていただけたらと。志宏さんがこんなにジョビンを弾く機会もレアだと思いますので、どうぞお聴き逃しなく!
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■2017/7/16(sun)
JR/井の頭線「吉祥寺」駅より徒歩5分
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